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REPORT

2018年8月1日から2日間、ベルサール秋葉原においてセガ・インタラクティブより8月2日発売のPS4用ソフト『BORDER BREAK』の完成披露会が開催されました。

 

本イベント最大の目玉として、ゲームに登場するブラスト・ランナーが1/1 PLASTIC MODEL PROJECT として実寸大プラモで登場しました!

 

今回はその製作を弊社にご依頼いただきましたので、製作レポートをお届けしたいと思います。

 

 

 

 

「1/1プラモデルプロジェクト」は『BORDER BREAK』発売に合わせたプロモーション企画として展開されました。

 

さらにその製作過程もウェブ発信していくことで、長い期間をかけて情報を拡散していくというものでした。

 

PS4®版『BORDER BREAK』公式サイト
http://ps4.borderbreak.com/

 

このプロジェクトは昨年末からスタートしました。完成まで7ヶ月を要するビッグプロジェクトは弊社でも数少ない事例です。振り返ると本当に長い道のりでした。

 

このプロジェクトが他の企画と違った点は、単に大きなロボットを作るというだけではなく、まず1/1サイズでプラモデルのランナーを作り、それらを使って実際に組み立てていき、実寸大のブラスト・ランナーを作るという点でした。

 

 

 

 

初めに作った1/1プラモデルのランナーは新宿駅地下通路 新宿メトロスーパープレミアムに展示したのですが、展示から組み上げまで間を空けすぎると話題が持続しないため、その期間はなるべく短くするように依頼されました。

 

こういった条件であればプラモデルのランナーと実寸大の造形は別々に製作した方がベターです。しかし私たちはクライアントのコンセプトをリアルに実現したいと思い、巨大プラモデルを組み上げるというストーリーに沿って製作することに決めました。

 

しかしクライアントから提供されたブラスト・ランナーのデザインを見たとき、その細かいディティールに頭を抱えました。ただそのリアルで重厚な雰囲気は私達が “カッコいい!作りたい!” と思うには充分な要素でした。

 

そのとき「ロボット造形の歴史に残る一番凄い造形を作る」という決意をしたのです。

 

・設計
デザインの他にもポーズが問題でした。普通に立っているポーズなら製作もまだ容易だったことでしょう。全長4mのロボットを、しかも膝をついたアシンメトリーなポーズで安定させるためには内部設計がとても重要でした。

 

今回は半屋外という条件のもと、造形の予想重量を割り出し強度計算を行いました。屋内であれば条件は易しいのですが、設置するベルサール秋葉原は風もよく通る場所です。風の抵抗も考慮する必要があり、またロボットのデザインがスタイリッシュな反面、どうしても細い部分が出来てしまうため設計は難しい作業となりました。

 

さらに運搬や設営の仕方も考え分割や組立方法を検討し、結果的にはほぼ全身に鉄骨が入りました。

 

 

 

 

・データ
内部設計が完了したあとそれを3Dデータにフィードバックしていきました。今回はクライアントのご厚意でベースモデルを提供していただけたので、データ作成はいつもより進んだポイントから始められました。

 

3Dで原型を作る際に気をつけることは、出来上がりのサイズ感、めり込みや浮きが無いかなど注意することです。PCモニタの中でいくらカッコいいモデルが出来ていても実際に作れなければ意味がありません。

 

ゲームモデルやムービーモデルは造形用のそれとは用途が違うため、データの作りが違います。そのため提供いただいたデータをまず造形のモデルに変換していく作業が必要でした。実際に組み立てていく通りに各パーツがジョイントしていく仕組みも3Dデータの時点で作っていきました。

 

その中で感動したのは、指はほぼデータのまま3Dプリントしたのですが、実際に曲げることが出来たのです!クライアントのリアルなデータ作りにはさすがだなと感じさせられました。

 

 

 

 

・製作
造形の仕様についても初めの段階で検討しました。ロボットデザインのディティールの細かさが今回頭を悩ませた一つの要因でしたが、あり物の部品や実物のボルトを使うなど、簡単で効果が高い方法を模索しました。

 

「細かいコダワリが果たして何人の人に気付いてもらえるのだろうか」という思いはありましたが、始めに決意した “一番凄い造形” という思いの元に細部まで再現するように努力しました。

 

 

 

 

プラモランナーについては、細いフレームで重量のあるパーツをどう支えるのかが課題となり、選んだ材料は鉄パイプでした。これを決めるには知り合いの業者に相談したのですが、こういった時に相談できる造形業界のコミュニティーは大事だなと毎回感じます。

 

展示スペースの都合で全身分のプラモランナーは展示できなかったのですが(仮に出来としたら大変な事になっていましたが)展示するパーツはランナーに付けるための加工などを施していきました。

 

組み立ての際の鉄骨が入る穴が空いているパーツは、ランナー展示のために一時塞ぐ必要がありました。通常だと裏側などで見えない部分は仕上げをラフに出来るのですが、そういう部分もランナー展示のために綺麗に仕上げる必要があり、そういう意味でもプラモランナー展示後の組み立てを考慮して作っていくのは骨が折れる作業でした。

 

 

 

 

・LED
なんとブラスト・ランナーには全身で20箇所も光る部分があります。
それぞれの光り方もデザインされており、それを再現したいという要望でした。大きなブレードの刃が光るのが最大の難関でした。
ここをどのように作ればいいか制御チームと密にディスカッションを重ねました。

光る部分は発光機構を埋め込むスペースを確保するため、データ作成チームに随時フィードバックして連携をとりました。また内部で配線を通していくスペースや、各配線をコネクションしていく作業のことも考えて設計しました。

 

難しいのは内部に大きな鉄骨が入ってくるので、それを避けながらLEDのすべてのパーツを入れ込むことです。もし光る仕様がなければ製作もスムーズでしたが、これらが光ったときには最高にカッコいい仕上がりになる確信はありました。

 

問題のブレードの刃は光らせるためにクリアな素材で作る必要があり、アクリル板を組み合わせて作ることにしました。ただ刃も幾つかの面で構成されているデザインだったので社内での製作は難しく、アクリルの加工業者をいくつもあたる事になりました。全長3mにもなるアクリル加工はたやすくはありません。

 

幸運にも製作可能だという業者を見つけることが出来、無事にこの問題はクリアすることが出来ました。発光機構は完成したあとの取り付けでは、造形チームと連携をとって問題なく入るか、隙間がないかなど、何度も入念にチェックを行いました。

 

 

 

 

・塗装
ロボットのパーツ毎に細かく設定されていた質感、光沢、色味の設定を塗装チームが忠実に再現しました。

 

今回は “リアル” さがクライアントがとてもこだわっているポイントでした。

 

プラモデルではあるものの、実寸大の造形になったときには本物のような兵器感が求められました。そこで実際の重機などを観察し、経年変化の仕方や汚れ、錆や塗装の剥げなどをチームで勉強しました。それはリアルな兵器を作る上では重要な資料となりました。全身に細かくリアルな塗装を施していくのは時間との勝負でしたがなんとか設営の前夜に完成させることが出来ました。

 

 

 

 

・その他
ここだけの話、製作金額についてもいくらでも使えるという状況ではありませんでした。プロである以上は常にそれを考慮した上で製作のやり方を考えて進めていかなくてはなりません。ただコダワリとお金の問題は仕事の上では常にぶつかり合うものです。通常の製作であれば妥協という選択肢も重要です。妥協というと間違えて解釈されそうですが、注力する部分を限定するということです。

 

しかし今回に関しては、コダワリを押し通して進めました。

 

・設営
これらの工程を経て、いざ設営となりました。
まずはプラモデルのランナーを新宿駅地下通路に設置するプロジェクトがありました。もう既に展示は終わってしまい見ることは出来ないのですが、写真で少しでも雰囲気が伝わればと思います。

 

鉄パイプのフレームは見た目以上に重量があります。
それを終電が出たあとに地下鉄の入り口から皆で担いで運び入れました。

 

 

 

 

設営中から巨大プラモデルのランナーの存在感は異常でした。

ほとんど大人の悪ふざけのような玩具がそこにありました。

ただそれは私達を含め見る人の心に少し残っている子供心を揺さぶるには充分な光景でした!

 

朝を迎えた地下通路では、大きなプラモデルのランナーが並んでいるのを見て
思ったとおり行く人行く人が足を止めて眺めていました。

 

 

 

 

さらに面白い事が企画されていました。

なんと実際にパーツをカットする事が出来るんです!

正直な話、「カット出来るようにして欲しい」と言われた時は、なんて面白くて困る相談なのだろうと思いました。そのためパーツをカットできる仕様を考え、それも製作に組み込むことになりました。このサイズのランナーを切り取れるニッパーは存在しません。そこでボルトクリッパー(鉄をカットするようなもの)を
使うことにしました。実際に一般のお客さんの前でカットするパフォーマンスが行われたのですが想像以上の人だかりが出来てしまいました。

 

参考リンク:ファミ通.com様(別ウィンドウが開きます)
https://www.famitsu.com/news/201807/05160395.html

 

プラモデルのランナーの展示は無事に終えることができましたが、すぐに秋葉原での実寸大の展示にシフトしていかなくてはなりません。

 

やることはたくさんありました。カットしたパーツのメンテナンス、完成したパーツの組み立て、細かいディティールパーツ(全身に1000箇所以上あるボルト)を取り付けていくなどを繰り返し完成を目指しました。

時間もない中、スタッフ総出でなんとか製作は間に合わせることが出来ました。

製作はバッチリ完成してその出来も満足いくものになっていましたが設営が無事に完了して一般のユーザーの目にどのように映るか、リアクションを見るまで安心することはありませんでした。

 

 

設営は深夜、静まり返る秋葉原で行いました。
朝にはここに4mのブラスト・ランナーが目の前にあるのだと思うとそれだけで興奮しました。

 

 

 

 

すこしずつ丁寧に組み上げていきます。造形は見た目通り重量があります。
ユニックで吊り上げながらの大変な作業でした。

 

 

 

 

すべてが組み上がり、最後にLEDが点灯したとき、これまでの辛く長かった製作が思いだされました。

しかしその出来は「ロボット造形の歴史に残る一番凄い造形を作る」というものを充分に満たしていると感じました。

自分たちで言うのはどうかと思いますが、めちゃくちゃカッコいいロボットが出来ました。

 

 

「ついに完成したーーー!」

 

 

 

 

その頃にちょうど朝日がのぼりはじめ、秋葉原の街とそこに佇むブラスト・ランナーを照らしていました。

私達はその光景をこれから忘れることはないと思います。
これを見た人たちも何かを感じ心に残してもらえると嬉しいです。

 

Writer:小山智史(製作ディレクター)

家でゲームはしませんがゲーセンは行きます
ボーダーブレイクもやってました
下手ですが音ゲーとかも好きです

ライター:小山智史

カテゴリ:REPORT



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